神戸ヘラバラウンジ、アラウンド

2018年の話。

今回、oopnumの上田君からお誘いがありソロの演奏で神戸ヘラバラウンジ出演となった。

 

ヘラバラウンジはとても行きたいと思っていたし、上田君とも会いたかったので嬉しく思い、前のめりで出演を快諾。

 

10月15日にソロ音源発売となり、演奏の為の準備を進めていて前日など4時間スタジオに入ったりとにかく念入りに潮が満ちていった。

 

ずっと待ち望んでいた新しい事が始まる。

 

当日、完全に自由なオレは午前のうちに新幹線を捕まえて神戸へと向かった。

新幹線車内ではいつものようにビールを飲んで楽しむ、という事もなく

やはり環境設定の確認と編曲をした。このたび、初の試みでギターを持って行かずに演奏する。

 

何というかギターを持って行くと必ずそちらに囚われて何か集中出来ないと思う事があったし、ギターの出力を確保するとどうしてもラップトップの音質と混ざらずに変に別れて聴こえてしまうので。

恐らくこれは音響に関しての知識不足だなと知りつつじゃあ混ぜなきゃいいじゃんという答えの下、今日の朝を迎えたのだ。集中に向けて。

 

神戸には13時に入り、時間もあったので久しぶりに三宮を散策した。

今回地下鉄から街に入るのは初めてで少し面食らった。記憶よりずっと派手な印象で何というか街の雰囲気や自販機の挙動に至るまでなんか油断出来ない感じの街。土曜日という事もあり雑踏と人いきれ、街宣車の怒号。空は青かった。

 

場所を確認しようとマップを見たら現在地と目的地が重なっていた。顔を上げてみたら交差点の反対側にヘラバラウンジの看板が見えた。

 

時間も宜しかったのでそのまま、まだ遊びたいと嫌がるスーツケースを引きずって入場からリハ準備。

 

準備していると北畠君ことバタやんと再会。ベアーズでよくteを観に来てくれていてとても楽しいヘラバラウンジのスタッフだ。と思ってたらドラマーの様な道具を持っていて、思っていたより身長が高くて戸惑ってしまった。オレの記憶力はどうなっているのか。

そして本日共演の mandogでドラムを叩くというので何か引き締まってしまった。リハからとてもすごい演奏だったので音楽好きな反面、自分の

立場があるので緊張が勝つ。

 

自分のリハも不安な事なく終了、

PAの方がとても親切であった上に

音作りが早かった。

 

呼んでくれた上田君も登場していてギター持って来てないんすか?と聞かれてしまったので上記の内容を話し、期待してもらう事にした。

 

少し息抜きし、外へ。

坂の多い町はその割に苦労も感じさせずオレにとって新鮮な事だらけだ。また、wild liliesの演奏もものすごく良かった。

 

思いがけない事ばかりで嬉しい、自分がそこにいる事が出来て嬉しい。

 

他の出演者を観て少し物怖じしないでもなかったが今回、ソロ演奏の内容を一新するにあたり、いつもとさらに違う自らの仕掛けにドキドキしていた。

改造した2メートルの恐竜の空気で膨らむ着ぐるみを用意していた。

 

これは数年前に見た夢が始まりで怪獣がノイズを出しながら凄い声で吠えているものだった。

着ぐるみ、というとエンターテイメント的に思われるかもしれないが

自分の内面や気持ちを外見に出す事が出来る素晴らしいアイデアだ。ナイスアイデア。あと、少しだけ呆れ顔になる人達の顔も楽しみにしていたかもしれない。

 

 

とまれ開場し、僕は自分の出番を待ち、準備していた。やりたい事の内容がシビアだったので酒なども飲まず共演の皆の素晴らしい演奏が進んでいった。

 

僕のセッティングの時間になり、道具を準備し終わったところで歯車は回り始めた。

インターフェース(以下AI)からまとめてステレオでPAに出していたがLが来ていないという知らせを受けた。

AIもpcも再起動したがLは出なかった

。AIのソフトを確認するという事も思いつかないまま、このままではマズイのでPAにお願いしてステレオミニジャックから直接アウトしてAIはとばした。音は出るようになったがまとめていたマイクのラインを卓で増やしたりして手間がかかった。この時点でトラブルが会場に伝わっていたがとにかく演奏を始めようと思った。

 

ところが今度はマイクがならない。オーノー。問題点がわかりやっとオーケー。

さあ、始めるぞ、とプレイボタンを押そうとしたところ、デスクトップ画面にポインタが見つからない。20秒は出てこなかったか。実際は3.4秒だったかもしれないがすでにDJは止まり、やっと始めるサインを出したオレにはとても長い時間だった。起きる事は全部起きた。pcが動いてるだけ有難かった。

 

とにかく随分手間をとったしこの時点で汗だくになったが始まったのだ。ヘラヘラせずに心の底からおまたせいたしました。ありがとうございますとアナウンスし、演奏が始まった。

一曲目は好調で、今回1番心配していた、2曲目のファイルを開く数秒間も上手につなげた。

アルバムから「detune」。現場DAWホストでリミックスするスタイルを取り、少しずつグルーブ増してく感じでとても良かった。楽しい。長いスネアロールのクリップを入れてここだとばかりに着ぐるみを着てすごいでかい音出してやろうと思った。

 

着ぐるみは膨らまなかった。着ている間にチャックが壊れ、密閉されず

 

何にも起きなかった。

 

怪獣になれなかった。

 

しばらく脱いだり着ようとしたりで大分マズかった。

 

その時点とさっきからのアレコレで観ている人達にはやりたい事も失敗も全部

バレバレでオレはとにかく取り繕えるものも何もなくとてもすごい空気を作ってしまった。やってしまった。皆さん、ちょっと自分に置き換えて想像してみて下さい。鳥肌だから。ホントマジですごいから。

 

しかし、じゃあわかりました俺にも矜持があります。音楽に集中しますと思い直したところで

ホストが落ちた。

 

もうボロボロである。とっさにmp3で次の曲を流して難を逃れたが、所詮再生してるだけなので、ステージでpcを観ているだけの状態になり完全に膝が折れそうだった。

 

神戸まで来て何をしているんだオレは。何だか自壊という言葉まで浮かんだぞ。何だそれ。

 

何でこんな事になってるんだ、ギターならこんな事になってなかった。準備したのか?再生しているトラックを見つめながら色々と反芻するものがあったが

 

準備はした。練習もしていたし俺らしい、余計なことまで入れてやりたい事をやっている。

 

じゃあ何で失敗してるのか!

人に呼んでもらって、人に聴いてもらって何だこれは、この状況は何だ!と自分に訴えたところで急に答えが出た。

 

やりたい事をやってるからだろ!

 

新しい事に挑戦してるから今失敗してるんだろ、と急に絶望の港から船が出港した。違うホストでプラグインだけ立ち上げて、演奏出来る準備をせめて今の曲が終わるまでにやろうとした。

 

別にライブ手法としては世界的に新しくとも何もない。この方法で今更

失敗するのも多分世界中でオレくらいだ

 

今この自らの未知による最高の失敗を誇らしく思い、その目の前の人達に演奏で聴いてもらいたくなった。全てが愛おしくなり、俺はライブを遂げた。まさにライブだった。等身大のオレが全部出た。

 

その後もミスも事故も続いたが、すでに恐ろしいものなどない。どうと言う事はなく、実験と冒険の第一歩を踏み出した。

 

ライブを終えた俺に憐れみの言葉は誰一人掛けてこなかった、と思います。

俺一人、勝手に誇らしく演奏を終えて空気的にマズイかな、と思ってしまったが

最後の mandogはさすが凄まじい演奏を行なっていて何も関係なかった。

 

終演後、物販の席にいたらCDが売れてしまった。持って来ていた新しい予備の梱包まで開けた時は少し涙出そうだった。さっきのライブ中の気持ちや、これまでの事が思い起こされてしまった。また、一人一人感想をくれたので嬉しかった。中には、さっきのあの曲入ってますか?とか聴いてみたくなりました、とかなんかもう嬉し過ぎでしょ。俺は1人1人に厚く感謝の意を伝え、とても良いCDです、聴いてくれてありがとうございますと必ず付け加えた。

tepPohseenの手持ちも売り切れたのでなんか感無量だ。

 

後になってわかったがヘラバラウンジの木村さんやバタやんがとても前から気にしてくれて、プッシュしてくれていたせいもある。

 

退館後には木村さん黒い森キヨシさん(!)、バタやん、キム君達と上田君の家で飲もうという事になり移動した。

 

途中のコンビニエンスストアではおでんを買い占め、酒を詰め込み、左から右まで食品を買い込み、普通に見たら下品な行動なのかもしれないが、その時の友人の「買い占めてやりましたよ!」という一言はすごく英雄的でかっこよかった。

 

途中参加になった木村さんとキヨシさん達と共に大きな話や小さな話、関西の話など聞いたり喋ったり。

次は黒い森と共演させて頂く約束、

木村さんから、失敗もあったけどさすがよくあそこから持ち直した。と言われ実はとても感動したりした。

バタやんにも物凄く嬉しい事を言われた。この尊敬する新しい友人達と

朝8時まで飲んでオレは寝た。

3時間後に起きて14時まで大好きな上田君と2人で飲んでオレは福岡に帰った。

 

ヘラバラウンジ、スタッフの皆様、上田君、共演の皆様、聴いてくれた方々本当にありがとうございます。

 

次はたっち渾身の企画「LIFE IS MUSIC」で東京、小岩のブッシュバッシュだ。